アンディ・フグの生涯 4331507440 広済堂出版
■Amazonエディターレビュー 2000年8月24日、格闘家アンディ・フグは、35歳という若さでその生涯を閉じた。病名は急性前骨髄球性白血病。10万人に6人しか発病しないという難病だった。『アンディ・フグの生涯 History of Andy Hug』は、その闘病の一部始終を見届けた著者による、アンディの生涯の記録である。 それは、奇跡的な「ラストファイト」だったという。アンディの周囲は、正道会館館長でK-1プロデューサーの石井和義、ボクシング元WBA世界王者平仲明信トレーナー、正道会館師範代でK-1レフェリーを務める角田信朗らが固めていた。アンディを襲う病魔を格闘の相手に見立てた、いわばセコンド役である。昏睡状態が24時間を超え、やがてアンディの心拍数が下がり始める。「アンディ、まだダメだよ」「ハンズ・アップ! ハンズ・アップ!手を上げろ!試合は終わっちゃいないんだから」。すると、限りなく0に近づいた心拍数は上昇する。「よ〜し!できるじゃないか、アンディ!そうだ、その調子だ!」。そうしてアンディは、3度も蘇生する…。 本書は、この「ラストファイト」のシーンを軸に、極真空手と出会ったスイスでの少年時代から、極真世界大会で頭角を現し、30歳でK-1に参戦、K-1グランプリ96で悲願の優勝を果たし、人気、実力共に格闘技界1の座に登りつめたアンディの歩みを描いている。それは、「鉄人」「青い目のサムライ」と呼ばれ、必殺技「かかと落とし」で2メートルを超える大男たちを翻弄したファイターの歴史である。しかし、ファンが魅せられたのは、アンディの強さにではなく、見事な「負け様」や弱さにだと著者は書く。アンディは肉体、年齢、ルールの上でハンディを背負っていた。そして負けそうになり、実際、数多く敗れた。一撃でも倒された。だが、何度も挑み、リベンジも果たした。この危く不安定な生き様に、ファンは感情移入できたのだと。今回、アンディは「これまで闘った中でも一番の強敵」に挑み敗れた。だが、本書を読み、誰もアンディを弱い人間だとは言わないだろう。(棚上 勉) |